ストⅢのキャラクターのデザインについて
あ、その前に
なんで、誕生日を設定しなかったんですか?
歳を取らせたくなかったから。
どんどん年寄りになっていったら
ストリートファイターⅣ作るときに
大変かなと思って。
そしたら、ストⅢより前の話だった、という。
その手があったか!と思ったね(笑)
その辺言い出すと大変だからね。
アレックス
もともと北米市場がメインじゃない
日本のリュウが
空手やっていて人気があるのと同じで
僕の中ではアメリカはプロレス、
レスラーってイメージでした。
アメリカは今でも格闘技が
人気あるじゃないですか、日本より。
だとしたら
やはりアメリカのキャラクターを
主人公にした方が良いということで
安田さんに頼んで
デザインしてもらいました。
最初は警官※1っていう設定もありました。
元プロレスラーの。
人気でそうじゃないですか。
元プロレスラーの市長※2とかいますもんね。
で、安田さんがラフを持ってきてくれて
かっこいいんでこれにしましょう、となりました。
やっぱりW〇Fとか、当時の人気を反映しました。
そうなると主人公が
投げキャラになる...という。
また、リュウのコンパチ作っても
新しくないじゃない。
リュウは出る事決めてたんで。
主人公は地味な方が良いんですよ。
聖〇士星矢でも一番地味じゃないですか。
周りの方が派手でしょ。
フェニックス、とかキグナスとか。
エレナ
アフリカ出身でスタイルが良いから
男より女の方が良い。
男だとどうしても、
いかつくなっちゃうから。
いかついキャラクター他にも沢山いたし。
アフリカで女性で手足が長い...
となったら
カポエラが合うんじゃないかと。
とにかく資料が無くて大変でしたわ。
当時、カポエラ関連の資料が
少なかった、と言うことですね。
簡単に動画検索とかなかったから。
一番情報があったのが
「世〇の歩きかた」のビデオとか
旅行関連のビデオに沢山のってた(笑)
なので取り上げられているかどうか
解んないけどイチかバチかで
片っ端から買ってました。
イチかバチか。
大変ですね...。
今ほど、メジャーじゃなかったからね。
道場でもあれば見にいったんだけどね。
それでもやる!って決めてやりました。
という意味では思い入れのある
キャラクターなんですね。
ともかく資料が大変だった(笑)
その思いででいっぱいです。
ユンとヤン
はじめから人気を狙ったキャラでした。
主人公と比べると派手ですし、
ブロッキングでカンフーのやりとりを
やりたかったと言うのもあるんですが
そういう意味では、一番思い入れのある
キャラ達ですね。
少年で若いっていうのもポイントですね。
1P、2Pでキャラ違いとか
かなり凝ってましたもんね。
ダッドリー
完成して「紳士のスポーツ」という話があります。
今までのボクシングキャラは、敵役というか、
ボクシングのイメージあまり良くないなと。
紳士のスポーツというキャラも見てみたいなと
それも発祥のイギリスでお願いしましたら、
わりと最初からダッドリーな感じで出て来ました。
一番すんなり決まったような記憶があります。
いぶき
いぶきは今までにない、
ちゃんとした忍者だなって思ったんですよ。
こっちは資料が多かったから(笑)
さすがに日本なんで
骨法とか忍者とか、
本屋行ったら沢山資料があったんで。
まー、いぶきは髪の毛つけるのが大変だった。
他のキャラの2割3割増して
キャラ容量が多かった。
全部に髪の毛パーツつけなきゃいけなかったんで。
え、貞本さんが髪つけてたんですか?
別パーツの髪の毛を?
髪の毛が数パターン用意してあって
人手がないもんだから僕が。
一日一日ちょっとづつね。
みんなの手を借りてやりましたね。
何か月もかけて付けました。
最初にデータ見たときに
「髪の毛大変そやな、頑張って」って言ったのに
数か月後、付けたのは僕だった、というね(笑)
大変でしたね...。
じゃ、いぶきは「そういう思い」のキャラ。
「そういう思い」のキャラです。
ネクロ
やっぱりストⅡと相対させて
キャラクターを考えているので
やっぱりダルシムですよね。
ダルシムが腕伸びるのは、
ヨガの神秘なんですけど
同じこと普通の人は出来ないので、
ここだけちょっとSFっぽいんですが
改造人間と言うことで
まぁ、ギリギリなんとか。
ガールフレンドの設定とか作ってね。
基本的にキャラクターの設定の
厚みを作るために
サブキャラは全部決めていました。
エンディングとかに出すために。
各キャラに必ず
サブキャラクターが居るでしょ?
確かに。
沢山いますね。
登場人物だけで話を作るのが
非常に難しかったし
キャラクターの厚み、とか二次創作とか。
二次創作も想定されて
作られていたんですね。
フックは多い方が良いし。
そこから気に入ってもらえても良いし。
あのネクロステージの後ろで
「バチバチッ」って
やってる巨漢の人※3にも設定が...。
あれは良くわからん。
あっはっはっは。
博士にして、って言ったら
あんなんなったんじゃないかな。
もう少し威厳のある博士かな
と思ったんだけど。
まーいっか、ってなりました。
でも、あれ以降出てこないですね。
あの博士。
使いにくい、普通じゃなさすぎる(笑)
でもそのうち
プレイアブル化とかしてよ。
ナッシュもそうじゃない。
設定でだけいて、プレイアブルに昇格。
サブキャラ達にはそういう思いもあったんだよね。
人気が出るならば
ファイターとして出せるわけなんで。
あの博士以外、
ですよね。
あの博士以外(笑)
オロ
最初のテーマは
「ブラジルでグレ〇シー柔術」で発注してたんです。
あ、そうなんですか。
デザイナーの方から
デザインが上がってきて。
全然発注と
違うじゃないですか(笑)
「コイツ、凄いな...」と言うことになって
「コイツ、動かしたい!」って言う
キャラマンもいて、
最終的に「イイね」ってなりました。
ショーン
ショーンは最初からいたんですか?
ただやっぱりキャラクターの数が...。
ヒューゴーが間に合わなくて
2ndに後ろ倒しになったので。
やっぱりコンパチキャラで。
このキャラもハンデをつけるための
施策だったんです。
上手い人が
「俺ショーンやるから対戦しよや」
と言って貰えれば
友達同士なら対戦してくれるかなと。
やっぱり
ハンデつけるなら弱い物を
用意するしかないですよね。
なのでショーン。
ショーンは弱いから弟子って設定にしました。
弟子なら弱くていいだろ、ってことで(笑)
結局ストⅡの時代は「対戦台」が出る前までは
「1人プレイ」が主流だったわけじゃない。
ストⅢ、まぁヴァンパイアもそうだけど
その頃になるといきなり「対戦」じゃない。
そうするとやっぱり「錬度の差」が出てしまう。
最初は「1人プレイ」やってくれ!
なんて言えないじゃない。
だからの施策だったんだけどね。
やる人はスタートダッシュでやり込む、
そこの差はなかなか埋まらないんだよね。
今は仕事でスマホのゲーム作ってるけど
その点に関しては
今も昔も変わらないかなって思う。
ギル
赤青黄の最初三原色かなと思ったんです。
ユーザーさんの意見でも
アレックスがトムを倒した「金髪」の男を
探しているじゃないですか。
でも「金髪」の前に赤青だろって(笑)
最初は赤青じゃなかったんだよね。
ベガみたいに「悪人」じゃなく
二面性があるキャラクターにしたかった。
世界を支配しているが
「悪人」でも「善人」でもない。
その辺がベガとの対比で出来た。
ベガと絡むと大変だし、めんどくさいからね。
大変でしたよ...。
もーなんで
ベガ出てこないんだよ!ストⅢでって
思いましたから。
はっはっは(笑)
最終的にはやっぱり
「格闘家」なんだろうなと思っていて
ギルは「格闘家」ではないな、と思ったんです。
そうね。
ダルシムのヨガファイアは
幻影じゃないですか。
そういうのを超越した存在なんだろうな、
と考えていました。
「氷」の力って人間では再現で
きないじゃないですか。
「炎」だったら摩擦などで
嘘っぽいですけど説明できますよね
そういう未知の領域まで踏み込んだ
ボスなのだろうなと思ってました。
「炎」と「氷」を使うキャラクターを
作りたかった、と言うのはあるよね。
指摘通り「氷」は出せるキャラって
作るの難しいよね。
ギルはちょっとSFっぽいね。
実は当時の企画で 少しだけ考えていた事なんだけど
「属性」ってのがあったんだ。
「火・風・水・雷」とかね。
スーパーアーツにも取り入れようとしていたんだよ。
ストⅢで出来なくても、
次回作へのパスとして実験してたのが残っている。
さすがに、
「属性」「新キャラ」「ブロッキング」って
一気にやったら、
ついてこれないなと思ったんでやめたんだ。
当時の格闘技とゲーム
K-1、プロレスも地上波でやってたし
格闘技が身近にあったんだけど、
最近はゲームの方が身近だもんね。
僕は格闘技を再現したい
って気持ちがあったんです。
だからあまりコンボとか好きじゃなくて。
時代によって好みが変わっていきますね。
コンボ好きな人は多いと思いますが。
良いリズム、良い音がしたら強い。
野球と一緒で良い音がしたらホームランだ、
みたいなね。
長くやっていると「音」が一番大事だなと思う。
コンボが好まれるのもそうじゃない?
攻撃はやっぱり「音」だよ。
真・昇龍拳なんて「音」だけで調整したからね。
キャラバランスだけじゃなく
やっていて楽しい、が重要だからね。
キャラクターの強さが平均化していきます。
ゲームなんだから
もっと好き勝手キャラを作っても良いのに
と思ったりもするんですが。
「見た目の説得力」「競技性」
「面白い事の提案」「見た目の解りやすさ」
が格闘ゲームでは重要視されていきますね。
それはそうと
「攻撃」だけじゃなく「やられ」※4も
沢山考えられていますよね。
「行ったことに対するリアクション」
だから。
格闘ゲームだったら「やられ」じゃない。
ただ、「やられパターン」作るの
面白くないんです(笑)
やっぱり
「攻撃」に時間も容量も割きた
い って意見が大半だよね。
なんで、企画は書いてみたけど
実現はしなかったね。
それでも、
「キリモミやられ」と「ひざ崩れKO」だけ
やってもらったんだよ。
そしたらデザイナーさんから
「ひざ崩れKO、面白いですね」と言われ
「だから言ったじゃん」ってなったんだけど
時間オーバーでできなかった。
「キリモミやられ」は
もっと派手にしたかったんだけど
「起き攻め」の関係で出来なかった。
「マンホールアウト」※5とか
面白いじゃないですか。
でもね
作るのが大変なんだよね。
それ用のマスクかパターン描かないと
いけないからですね。
そういった特殊なリアクションは
背景でやってもらいました。
ラーメンどんぶりが落ちるとかね。
それでも嫌がられたけどね(笑)
懇願して「ラーメンだけでも...」ってね。
そしたらデザイナーさんから
「ラーメン、面白いですね」と言われ
「だから言ったじゃん」ってなったんだ(笑)
同じ流れじゃないですか(笑)
色々できました。
最初の一個を作ってもらうのが
大変なんだよね(笑)
ホントは波動拳をブロッキングしたら
「奥に弾く」というのをやりたかったんだ。
ただ技術的に難しい、ということでね。
上手い人は狙って奥の花瓶とかを壊して
スコアがもらえるとか
やりたかったんだけどね。
割とみんな真面目なんで
「勝負が公平に」とかその辺に注力してたね。
さっきの「競技性」に通じるのかもしれないけど。
だからジャッジメントギャルズ※6とか
作ったけどあまり出番がなかったね。
「ダブルKO」「タイムオーバー」
珍しかったですもんね。
調整進むと、どんどん出なくなっちゃった。
まぁ、そりゃそうなんだけどね(笑)
真面目に極める、をやりたい人が多かった。
「ラーメン」も「ギャルズ」も
要らないって言うね。
でもそうなると、
初心者が入る隙間がなくなっちゃうからね。
そこは大事にしたかったんです。
「世界観」が好きな人半分
「競技」が好きな人半分いて
と言うのが理想ですよね。
ただ、「ラーメンが落ちる」くらい
勝負に関係ないから
良いと思うんだけどなぁ(笑)
どちらも両立させるために
「ショーン」や「スーパーアーツセレクト」
があったんだよ。
「理由づけ」と
「納得度」ですね。
作っているときには
解らないもんだよね(笑)
ストリートファイターⅢシリーズの生き字引、
貞本さんにお話を伺いました。
ブロッキングやキャラクターの誕生秘話などなかなかレア。
貞本さん、ありがとうございました。
皆さんも読んでいただきありがとうございました!
また次回!
なぜ後編が
遅くなったかと言うと...。
ストリートファイターと
モンスターハンターエクスプロアがコラボ!
詳しくはコチラ!
貞本さん
なかやま