ファイティングオールスターズ
今回は残念ながら未発売となってしまった
「カプコン ファイティングオールスターズ」について
当時のディレクターだった田邊さんにお話を伺いました。
自分は田邊さんと別の会社で5年くらい一緒に働いていました。
とても気さくで話しやすい、いい先輩です。
当時も格闘ゲームの話ばかりしていましたね。
立ち上げのきっかけ
田邊さん、お久しぶりです。
4年ぶりくらいですかね。
そうだね。
久しぶり。
ファイティングオールスターズ
立ち上げのきっかけを聞いても良いでしょうか?
元々いた会社が、
いろいろあって無くなったんだよ(笑)。
それで当時の開発メンバーが
固まって移動できる場所を探していたんだ。
当時ゲームを作っていたチーム、
って事ですね。
そこを丁度、岡本吉起さんに
拾ってもらったんだよね。
「丁度いい規模のチームを探してた、
まとめてこいや。」ってね。
その時に、2本企画を立ち上げることになって。
なるほど。
もう一本も気になりますけど。
それで自分が担当してたのが
もう一個の
ファイティングオールスターズだったんだよ。
格闘ゲーム制作経験者が多かったから。
やりたい、ってメンバーも多かったしね。
丁度、立ち上げの直前に
開発が止まってた格闘ゲームがあって...。
〇〇〇〇〇〇 〇〇 〇〇〇 〇!
デザイン画とモデルは
いくつか見たことがあります。
「一から作るより、過去の資産使ってやろう」
って話も出たからさ。
それを活かそうって事になった。
なるほど!
色々繋がりました(笑)。
「自分たちの色が出る物にしよう」
「カプコン色が無い物にしよう」って
話になったんだ。
キャラクターをスタイリッシュに!
ストーリーを深く描こう!
みたいなコンセプトがあったね。
リュウも登場する予定があったし
モデルデータもあったんだけど、
デザインから変えちゃわない?みたいな話もあった。
実際、動いてたやつ※1は
いつも通りの胴着でしたね。
D.D.とかの2Pコスチュームが
ツナギ着てバイク整備士みたいなデザインでしたよね。
いまで言う
アレンジコスチュームみたいな感じでしょうか?
オールスターズ色の強いリュウ。
スタイリッシュな私服のリュウ。
ラフを幾つか描いて
デザインは決まりかけてた。
やりすぎ!って意見が多かったから
やめちゃったけど。
「CODE HOLDER」の3人が主人公で
彼らに他のファイターが巻き込まれていく、
という設定だったんだ。
システム
結構試行錯誤※2されてましたよね。
「回り込み」とか 「ドラマチックカウンター」とか。
そんな名前やったな(笑)。
ちょっとドラマチックな
ゲームにしたかったんだよね。
捌き+攻撃、
ですよね。
成立した瞬間にゲーム全体が
スローになるようにしてた。
相手の攻撃をかっこよく避けつつ攻撃、
それをまた避けつつ攻撃って感じでね。
技と避けの応酬をやりたかった。
当時、偉い人に呼ばれて
「この企画だけで
ファミ通さんに4週くらい
特集組んで貰える物になってる?」
って言われて、
「が、頑張ります。」としか言えなかった(笑)。
無茶苦茶ですね(笑)
「勝利宣言※3」はどんな感じでした?
対戦前のVS画面でスタートボタンを押し、相手を煽れ!
「勝利宣言」。
企画の最初は
「対戦前に相手を挑発するような事」をやろうって話。
それを話していたら「勝利宣言」って
単語が出てきて
響きが良いからやろうってことになった。
「勝利宣言」するとスコアが加算され
特殊な勝利演出になるんだよ。
「勝利宣言」する事にデメリットってありました?
自分が見たバージョンでは
「勝利宣言」したら
相手に1本でも取られたら負けってやつでした。
今考えると凄いよね。
お金払って貰っているのに※4
1本でも取られたら負けって(笑)。
もう一個。
制限時間ありましたよね。
あれはファイティングオールスターズの
ストーリーとも絡んでいるんだよ。
ストーリーと世界観
「CODE HOLDER」デスなんだけれど、
寿命が短いという設定だったんだ。
彼はイングリッドの〇〇で
逆に長寿のイングリッドと
一緒に居られる時間が限られている。
だから破れかぶれで爆弾※5を仕掛けるんだ。
それに関係してゲームには制限時間※6があった。
マルチエンディングだったんだよね。
「CODE HOLDER」の話を描きつつ
ゲームの仕様にも活かす。
イングリッドについて聞いても良いですかね?
彼女の設定は現在3種類あるんですけど、
「ファイティングオールスターズ」
「ファイティングジャム※7」
「ストリートファイターZERO 3↑↑※8」
それぞれで微妙に違うんですよね。
未来人だったりとか。
「ストリートファイターⅡ」「ストリートファイターⅢ」「ストリートファイターZERO」
「ヴァンパイア」「ウォーザード」からキャラクターが登場。そこにゲストとしてイングリッドが参加。
イングリッドはストリートファイターZERO3↑↑で追加された。
好きに作ってもらった方が。
設定に縛られて、良い物が出来ないんじゃ
意味がないからね。
ファイティングオールスターズでは
80歳くらいの「ロリババア」がやりたかったんで
ああなってます(笑)。
思ったより若かったです(笑)。
デスはどこまで出来てたんですか?
ゲーム内で動いてました?
僕見たことないんですが。
キャラ性は僕が決めてたんだけど。
顔の片側が崩れかかっていて
体もボロボロ。
暗黒物質を射出するような技を持っていた。
エフェクトに頼ろうと思っていたんだよね(笑)。
彼の衣装ってコート※9じゃない。
当時の技術でかっこよく見せるのが大変でした。
他に覚えてる
設定とかってあります?
人間たちが害悪になった時に現れる
アポトーシス(自殺細胞)的な生命体で
親から子に遺伝などではない。
イングリッド・デスは
ナチュラルコードホルダーという
生まれながらの能力者。
D.D.とルークは
改造されて「CODE HOLDER」になった。
イングリッド長生きの因子を持っていた。
衰えない因子。
デスは寿命が短い代わりに
身をけずって暗黒物質が使える能力がある。
D.D.は「クリムゾンサンダー」と呼ばれ
赤色の電撃を放出できる能力。
グローブの左右に「-」と「+」の
マークが入っていたね。
ルークは高速移動ができる。
ちなみに名前は「クール」な奴だから
逆から読んで「ルーク」にした(笑)。
10年以上前の話なので
記憶があいまいだけど、
確かそんな感じだったと思う。
なんですけど?
これは書けないので伏字にしますが。
契約とか大丈夫だったんですか?
もちろん先方さんには話をしていたし
契約もしていたよ。
元々、古巣のキャラクターだし
良く知っているキャラクターだしね(笑)。
当時オリジナルのドットを打っていた
メンバーもいたしね。
でも、今となったらやっぱり秘密だね(笑)。
なんで出なかった?
「カプコン ファイティングオールスターズ」
って名前が嫌だったんだよね。
「カプコン」って入れるのは良いとして
「オールスターズ」が嫌だったんだよ。
「ファイティング サーガ」にしませんか?って
言ったんだけどね。
「オールスターズ」の方が売れるやろ!
って言われて(笑)。
良く聞く話ですが
なかなか酷いですね(笑)。
タイトル名から受ける
お客さんの印象と期待、
自分たちの作りたいもの、作れるものの
気持ちに差が出ちゃうからね。
「オールスター」の意味はそれくらい重いんだよね。
開発期間的には
1年半くらいでしたよね。
それくらいになるかな。
東京ゲームショウとAOUショーに両方出して、
さらに社内ロケテもやったんだけど
評判が悪かったんだよね。
だから作り直そう!って話になって
メンバーも増強したんだけれど
色々あって中止になっちゃったね。
とまぁ色々話したけど
なんでこんな話聞きたいの?
んー...
やっぱり供養したいから(笑)。
「ファイティングオールスターズ」は
自分の未熟さから結果が出せなかったからね。
会社に迷惑をかけてしまったし、
がんばってたスタッフ、
協力してもらった人たちに申し訳なかった。
そんなもんで、10年たっても
この話すると苦しいね(笑)。
でも
イングリッドが
「ファイティングジャム」で出たとき
少し救われた気がしたよ。
「ファイティングオールスターズ」好きな
方たちがいるんで、
自分も含め、色々聞けて良かったす。
こちらこそ、ありがとう。
また話そう!
当時の「ファイティングオールスターズ」の
ディレクターにお話を聞きました。
ゲームに対する愛情が深く、
とても優しい心の持ち主の田邊さん。
ありがとうございました。
読んでいただいた皆様もありがとうございます。
なかやま
田邉さん