安田朗さん
今回はストリートファイターⅡの生みの親の一人。
春麗をこの世に生み出したデザイナー
あきまん先生こと、
安田朗さんにインタビューしてきました。
安田さんは自分がカプコンに入社した時期
仕事でアメリカに行かれていました。
日本に戻ってこられた際に、サインを貰いに行ったのを覚えています。
現在はご縁があり、色々お話を聞かせていただいりしています。
ストリートファイターV発売1ヶ月後くらいに
安田さんの事務所にお邪魔しました。
ドアを開けた瞬間
玄関に倒れている安田さんを発見。
「大丈夫ですか!安田さん!」と声をかけました所、
眠っていて、来てくれたことに気づかなかったら悪いと思って
玄関で寝ていました、とのことでした。
大先輩にご心配かけて申し訳ありません。
びっくりしました...。
入社からロストワールド
すいません、急にお邪魔してしまって。
いえいえ、良いですよ。
運営サイト(シャド研)用にいろいろ聞かせてください。
まず、カプコンにはどういう経緯で入社されたのですか?
そこから(笑)
はいスンマセン(笑)
3日後に会社に来てくれって言われました。
金曜日に面接したから
休み明けにきてねって言われましたね。
当時の環境はどんな感じでした?
しょっちゅう会社に泊まってましたね。
あと、東京勤務だと残業すると700円
大阪だと500円の夜食費が出ました。
それ目当てで残業してましたね。
カレーライスとライスを頼むとか
食べ物の組み合わせのチャレンジをしてました。
カレーライスと、ライス...。
最初のお仕事はどんな感じだったのでしょうか?
最初はサイドアーム※1の背景マン※2でした。
1986年に発売されたシューティングゲーム。
左ショット、右ショット用のボタンが用意されており前後に弾を撃てる。
さらにアイテムを取得すると1P機体と2P機体が合体する事ができる!
※2 カプコンでは職種に○○マンとつける文化があるのです。
そうなんですね。
自分も最初は背景マンでした。
奇遇ですね。
当時は開発のヒエラルキーが
企画 > キャラ > 背景 だったんです。
自分の世代はキャラマンが
一番強そうでした。
勝手にオープニングを
作ったりしてました。
それが目に留まって異動になったんですね。
当時のボスがトイレに行った隙を見計らって
一緒にトイレに入って、
所属を変えてくれってお願いしました。
へー。
西谷君※3の右腕になれって言われたんです。
企画を見たり、
ゲームの土台を作る感じの仕事ですね。
いまで言うディレクションですね。
自分は企画を立ち上げるのが好きで、
なぜかというと立ち上げはキャラクターや
デザインが強いじゃないですか。
ええ。
好きでやってました。
調整とかは西谷君が上手いんで。
そのタッグで最初に作られたのが...。
最初は地面を歩く
普通の横スクロールだったんだけど
ボス※5からは普通のゲームじゃなく
自由な発想を持てと言われ仕切り直しになって、
ローリングスイッチというのを入れたりしました。
CP-1※6の1作目だから、
ホームラン打ちに行け!と言われてましたので
出来るだけゴージャスに作りました。
ショップシステム入れたりね。
一面ごとに雑魚のキャラのグラフィックがちがうとかね。
1988年に発売されたシューティングゲーム。
「クレオパトラとのデートが台無しだぜ!」など名言多数。
敵を倒して手に入るお金「ゼニー」を使用しショップでパワーアップすることが出来る。
※5 岡本吉起さん。
※6 CPシステム カプコンが制作したアーケード用基盤。
そうでしたね。豪華な作りですよね!
とにかくゴージャスにしようと。
まあまあ...全然売れなかったんですけども。
インカム※7が芳しくない理由は、
当時シューティングという
ジャンルがかなり限界にきてた。
それに、1プレイの時間が長いってのもありましたね。
開発期間も2年と当時としては長かった。
グラフィックも1面からアーティスティックな
有機的なデザインにしてたんですが、
いまのカプコンの会長、辻本憲三さんが
安田君の絵はすばらしいが
なにがどうなっているか良くわからない。
ビルを描いてくれ。
って言われたのでビルを入れました。
人間は何かわからないものより、
何かわかっている物の方が好きだ。
って言われたんで「なるほど!」と思ったんです。
でもそれを言われたころには
ゲームが大体完成していたので(笑)
よくあるパターンですよね(笑)
インカムが悪かった以外に
当時1メガロムっていうのを使っていたんですが
製造成功率が低くて、あまり存在しなかったんです。
ロムが予定より少ない枚数しか
製造できなかったってのも
収益が上がらなかった理由の一つ。
まぁ、そんなことは置いといてボスからは
内容がよくないから売れなかったんだ、反省しろ!
的な事を言われました。
ロストワールドは最後3ヶ月
ボス自らが調整して作ってくれたんで感謝してます。
「もうお前らには任せておけん」って感じでした。
とにかく
「苦労をすれば報われる」というのを信じて
必死でやってましたね。
でも上手くいかなかった。
そのおかげで「無駄を省こう」って意識が
芽生えましたね。
容量とファイナルファイト
ボスが会社のタイトル計画表をみながら
ストリートファイターⅡってのがあるけど安田やる?
って聞かれ
「やる!」って言ったんです。
おお、ついに来ましたね。
そのタイミングで使えるロムのグラフィック容量が
ロストワールドの半分しかないってことが解りました。
初代ストリートファイターの容量と比べると
3分の2くらいなんですよ、たしか。
とにかく少なかったんです。
数年前に出たストリートファイターより
後に出るゲームの方が
悪い環境で作るのはマズイなと思いました。
勝てないと思ったんです。
で、ここは一旦退いた方がいいと思ったので
別のゲームを作ります、ということになりました。
それがファイナルファイトです。
時間稼ぎですね。
当時、ロサンゼルスのゲームショーに
出張に行かされました。
流行っているゲームを見て来いと言われたのです。
そしたら
ベルトフロアアクション※8が主流だったんですね。
横に長いステージを移動し敵を倒すゲーム。
なるほど。
それを作ろうということになったんです。
で、そこでロストワールドと
真逆のことをしてやろうと思ったんです。
ファイナルファイトは当時
奥行きが3ラインぐらいあるゲームを考えてたんだけど
「それはダサいですよ。」と西谷君が言うもんだから
自由に奥に行けるようになったんです。
西谷君はアタリ判定とかをプログラマーと詰めていて
僕はキャラの操作方法とか
キャラのデザインと遊びを考えていました。
その時にロストワールドと異なり、
キャラの容量や期間を完全に計算してやったんです。
んで、少ない容量をうまく割り振りました。
さらに、
ロストワールドでやった、
各面ごとに違う雑魚敵ってのをやめました。
そうすることによって、
雑魚それぞれの強さを表現※9することができました。
アーケードゲームで、出会い頭にいきなり
理不尽な強さな敵が出てきたら
嫌じゃないですか。
コンシューマーなら
コンティニューできるかもしれないけれど。
ヤバくない
ヤバい
※9 Jはどのステージでも弱い、アンドレはどのステージでも強いからヤバい。
ふむふむ。
100円がかかってますからね。
ロストワールドの時に
会長にビルを出せって言われたんで、
全ステージ、ビルにしました(笑)
そんな理由ですか!(笑)
さらに会長は映画が好きだったので
映画を参考にしてゲームをつくれ
って言われました。
なので、映画数本を編集して
プレゼン映像作ったのをおぼえています。
その時に参考にしたのが
「ストリートオブファイヤー」と
チャールズ・ブロンソンの
「ストリートファイター」です。
あの辺の肉弾戦物をまとめましたね。
わりと会長のキーワードが効いてます。
「映画を参考にしろ!」なんて
公然でパクってもいいって
言われてるのと同じだから(笑)
パクってもいい(笑)
でも、かっこよくアレンジされてますよね。世界観とか。
操作性は
他のベルトフロアアクションのアンチな感じで
ボタンを整理しました。
ボタン連打で連続技をやりたいなと思いました。
あとは
当時はまっていた
PCゲームを参考に体力ゲージを出しました。
ファイナルファイトは
すごく使いまわしだけど
ロストワールドの半分の容量しか使わなくて
完成することができました。
完成直前にボスから
容量厳しかったら、
ロストワールドと同じくらい使っていいんだぞ。
っていわれて
「いまさら言われても」と思いました。
なので「大丈夫です」とキッパリ断りました。
しかし、その後にアイテム分
(※体力回復アイテムなど)の
容量がいっぱいで
もうどうにもならない!って事件がありました。
すると偶然、机の下から1枚ぺらっと容量表※10が
出てきて余剰がまだあることがわかりました。
机の下から(笑)
地味ですけど奇跡の容量ってことで。
アイテムが出せました。
ほんとギリギリのやりくりをする、
トンチですよね。
バラバラにして無駄がないように詰める事。
その後プログラムで座標指定しゲームに絵を表示する。
トンチと言えば、
コーディーの歩きって
横32ドットで作っているんです。
背筋が伸びている感じですよね。
データが軽くなります。
その代り12パターンのアニメを作りました。
上半身動いてなかったですもんね。
足だけのアニメーションでしたよね。
上下するから歩いているように見えるでしょ。
他の会社を
ちょっとばっかり出し抜くことばかり
考えてましたね。
すごいな!と思うことがいっぱいあります。
敵のセットとか、ステージの長さとか。
BGMもどれも秀逸ですよね。
あれ たまたまですよね(笑)
ステージの話ですが
ファイナルファイトの一面は
今でいうチュートリアルなんです。
よく見るとすごく短い。
画面が全部変わるから新鮮な気持ちですし
要素がぎっしり詰まっていて
短く感じないですよね。
電気が消えたりするとこが最高です。
電気消えるの
やりたかったんですよ。
全然話が変わるんですが、
ハガーってモデルになった人っているんですか?
プレイヤーキャラの中に
とにかくでかい奴が必要っていう、
その一点ですね。
でかいキャラクターって
本当に良いですよね。
今でこそ普通だけど当時は
「でかい奴=容量使ってる」
だからスゴイ。そういうことです。
こんなゴージャスな奴いないぜっていう。
「でかい=サービスがいい」
って感じですよね。
今は関係ないか。
実はバーディーがでかくなった理由も
それだったりするんです。
僕も設定的には
「でかい奴=強い」なんです。
いいですね。
そうかバーディーでかいし
伸びるし。驚いたわ。
世紀の嫌キャラですね(笑)
こんな話、世に出てないですよね。
出てないですね。聞かれないから(笑)
その後ストリートファイターⅡに
つながるわけですね!
そうです。
ファイナルファイトの
安田さん西谷さんコンビで
作ることになるんですよね。
そうです。
信頼できる相棒ってことですよね!
そん時はね(笑)
えっ
後編に続く・・・。
なかやま
あきまん先生