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Side readers : 01 「賢人夜話(後)」

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賢人夜話

格闘家ファイターたちの使う「力」について語り合うオロとダルシム。
そのさなか、オロの様子が豹変する。
老仙人は、突如として"殺意の波動"をまとって、ダルシムと対峙した。

賢人夜話(後)

「殺意の波動に駆られた相手、刺し違えてでも止める」
 その決意が、ダルシムの意識を、感覚を尖らせる。
 
 身じろぎすらできない必殺の間合いで、オロの純粋な殺意がダルシムに迫る。
 わずかな動きが、生死を分ける。
 ダルシムは全神経を研ぎ澄ます。
 
 己が肉体を世界から切り離し。
 同時に己を世界に拡げる。
 静かだった。
 風がやんでいる。
 夜香木ジャスミンの香りだけが、濃い。
 ダルシムの頬を、汗がゆっくりと伝う。
 時間が。
 止ま。
 る。
 
 ぱ。
 
 老仙人が、あっけなく拳を開く。
 途端に、極限まで凝縮していた暗黒の波動は、跡形もなく霧散した。
 
 にょほっ。
 
 何事もなかったかのように、仙人が笑う。
「今のが、殺意の波動。ま、マネごとじゃがね」
 ふう、とダルシムは息をつく。額の汗をぬぐう。
「驚かさないでください、老仙」
 本当にるつもりはなかったぞ。オロがにやりとする。
 もちろん嘘だ。老仙人は、拳を解くその一瞬前まで本気だった。ダルシムの覚悟がまた、本気であったように。
 くるりと体を回して、オロはポーチの柱に寄りかかる。
「サイコパワー、闘気、ヨーガの力、それに殺意の波動」
 ソウルパワーなどというのもあるようじゃな。オロはあごに手をやって目を閉じる。
「わしが思うに、そういった力は、根っこのところでみんな同じなんじゃ」
 指を一本立てて、老仙人は続ける。
「完全に同じ、というわけではない。じゃが、つながっている。同じだが、違う」
「同じで、違う......?」
「たとえば、そうじゃな。水面があろう、水のおもて」
 オロは手のひらを一振りして、水の面を示してみせる。
「水の中にいる魚と、水の上を飛ぶ鳥。その両者からみて、水面は同じじゃろうか?」
 同じ、ともいえるし、違うともいえる。ゼンの公案のようだとダルシムは思う。
「そう、ある意味では同じ。ある意味では違う」
 オロが、ダルシムの考えを読んだように解説する。
 水面は境界で、厚みを持たない。魚にとっても、鳥にとっても、水面は位置として同じだ。そして、水面の下には水が、上には空気がある。水面を境にして、それぞれ違う。
「境界というのがポイントじゃな。水面を越えて、魚はひとときであれば、空を飛ぶこともできよう」
「境界を、越える......」
 老仙人は目を細めてうなずく。
「水面であれば上と下の二つの境じゃが...... "この世界"と別の世界の境界は、二次元の面ではありえない。それは恐らく、カラビ・ヤウ多様体のごときものじゃろう」
「カラ、ビ?」
 ダルシムは返答に詰まる。この老人のいうことは、時々わけがわからない。
「ま、ともかく。この世界から別の世界への境界の越えかたが、ひとつではない、ということじゃ」
 ふうむ。ダルシムは長い腕を組む。
「つまり、闘気の技も、サイコパワーも、私のヨーガも...... 根源としては同じ力で、その力に至る方法、境界の越え方が異なる、と?」
 ぱちん。
 オロが指を鳴らす。どうしてだか、変に若々しい所作が、老仙人には似合った。
「そういうことじゃな。さしずめ、修行して空を飛べるようになった魚、ってところかのう」
 おぬしの場合、本当に飛ぶしな。そういって笑う。
 ダルシムは考える。自分の場合は、アグニ神への信仰と、修行。それが境界を超えて、ヨーガの力として実った。そういうことだろう。
 同じように、優れた格闘家たちは、心身の鍛練で境界を超え、闘気を身につける。サイコパワーや、殺意の波動にも、それぞれ越えるべき境界があり、手段がある。そんなふうに考えることができた。
「そして、その根源となる力、それは何か。じゃが......」
 老仙人は自分の足下を指さす。
「たとえば、この惑星ほし。わしらの立っている地面は一秒の間に五百メートルの速さで回っている。同じ一秒で、太陽のまわりを三十キロほど進む。宇宙の全ては止まることなく、動き続けている。そんな大きなものを動かしている力を、わしらは普通、感じることができない」
 ああ。
 ダルシムには得心するところがある。
 ヨーガの修行。瞑想は、小さな己を、大きな宇宙へとつなげる。オロのいわんとしていることが、だから、修行を重ねた身にすとんと落ちる。
「なんとなく、わかりかけてきました......」
 老仙人は目を閉じて、静かにいう。
「そう。力そのものには、善いも悪いもない。たとえそれが、サイコパワーであっても、あるいは、殺意の波動であっても、な」
 悪の力だと決めつけてしまっては、対処を見誤ることもある。そういいたいようだった。
 だが、とダルシムは思う。
 それだけではあるまい。
 老仙人は、さらにその先のことまでも、見通しているのではないか。
 すなわち、今ふたたび世に充満しつつある、あの男の気。シャドルー総帥、ベガのサイコパワー。その力の原泉を断ち切り、野望を潰えさせる、その方法を。
 つまり、老仙人は、ベガを倒せるのではないか。
 ダルシムが尋ねたそうにしているのがわかったのか、老仙人はふっと笑う。
「これが正義じゃ、正解じゃと表だっていうほどの脂っ気は、もうわしには残っておらんわ」
 後は、おまえたちがやれ。
 そう、いわれた気がした。
 力の核心に迫ること。そして、繰り返し現れる、力を濫用する邪悪に対すること。
 その意思。
 それは、世代を超えて、伝えなければならない。
 そう、いわれた。
 知らず、修行僧の掌が、体の前で合わせられる。
 闘いの構えではなかった。師に対して、そして大いなる力に対しての畏敬の形だった。
 今や、昼の熱気が遠くなった夜に、虫の音色が戻ってきていた。

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