傘が語る大きな雨音
ホラーが好きな人はもっと好きに! 苦手な人は好きになる!? ホラーの楽しみ方!!(後編)
前回はホラーを専門とした会社「株式会社闇」を立ち上げた頓花聖太郎さんにお話しを伺い、頓花さんのホラー論やホラーの楽しみ方について詳しくお聞きしました。
後編では、さらに踏み込んで、頓花さんと「バイオハザード」シリーズの関係性や「未来のホラー」について聞いてみました!
ホラーへの見方が変わると評判の、頓花さんのホラー論を見直したいという方はぜひこちらから!
── 頓花さんにとってバイオハザードとはどういった存在でしょうか。
頓花
そもそも、私がお化け屋敷に感動し、お化け屋敷を作りたいと思ったのはバイオハザードのおかげなんです(笑)。
20年以上前にはなりますが、当時大阪でバイオハザードをテーマにしたお化け屋敷がありました。非常に細部までこだわっており、当時の他のお化け屋敷では見られないクオリティーで作られていました。それこそまさにゲームの中にいるような体験で、とても怖かったですが、私の人生を変えるほど感動しました。それが、私が一番最初にお化け屋敷を好きになったきっかけです。
ゲームに関しては、「バイオハザード」が当時リリースされた頃、当時から怖がりではありましたが、恐いものに興味はあったので私の弟がプレイしているところを横で見ていました。やっぱり怖かったです(笑)。
「バイオハザード CODE:Veronica」がリリースされた時は本腰を入れて自分でプレイし、随分楽しませてもらいました。ストーリーに惹かれ、ホラーってこんなに楽しいんだと気づきかせてもらいました。ゾンビが大量発生するというシチュエーションだけではなく、レッドフィールド兄妹の関係性に主軸が置かれていて、その物語の美しさに惹かれました。そういった物語の奥行きとホラーの組み合わせが非常に印象的でした。
バイオハザード作品は、怖がりの私でも、怖いけどもうちょっとプレイしよう、とついつい続けてしまう工夫がなされていると感じさせられます。ホラー作品の先駆者として、特に演出部分は非常に勉強させてもらっています。
興味深いのは、近畿大学にて「ゾンビ学」を研究しておられる岡本健准教授(※1)と対談させてもらった時に話題になった、「文化的な恐怖心の違い」です。日本人は文化的、宗教観的にゾンビを怖いと思いにくいのでは、というお話でした。
宗教観に根差す復活論に基づくと、ゾンビとなってしまうとその後転生することができず、「死よりも恐ろしい」という文化的な恐怖が存在します。一方、多くの日本人はそういった文化的恐怖に馴染みがなく、その点では恐怖を感じにくいのではないか。それなのにバイオハザードに登場するゾンビはめちゃくちゃ怖いというのがすごいですよね(笑)。文化的な違いを乗り越える怖さと言えばよいのでしょうか。
これはおそらくバイオハザードというゲームがただのガンシューティングゲームというだけではなく、考え抜かれた演出に基づいて怖くなるよう設計されているからだと思います。
プレイヤーが置かれる状況は常に緊張感のあるもので、いかに生き抜くか考える必要があります。それを恐怖にさらされた状況下で頭を使いながらプレイするというゲーム性が、その体験をより深いものにしているのだと思います。
https://game.capcom.com/residentevil/ja/umbrella-20211015110000.html ※1 こちらが以前Under The Umbrellaでもインタビューさせて頂いた岡本健准教授の記事になります。併せてぜひご一読ください!
── ホラーとゲームという関係性についてどうお考えですか?
頓花
ホラーゲームを実際に現実として体験してもらいたいという構想を今検討しているのですが、そもそもホラーとゲームというのは実は両立が難しいのではないかと思っていました。ゲーム性の部分が強すぎるとホラーへの没入感が落ち、逆も然りだと思っていたからです。
どの程度、どのバランスで体験者側の脳のリソースを使わせるかというのはいつも悩むところです。ただ、バイオハザードの中でこういったことが出来ているから、と参考にさせてもらうことも多々あります(笑)。
小説などであればそういった苦労はありませんが、プレイヤーになんらかのミッションが課されていくことで、ゲームがホラーという体験から乖離していくことになるはずです。それでもバイオハザードがホラーゲームとして成立しているのは、戦うことで銃の弾がなくなることや、自分のライフをこまめに管理しなくていけないことなど、全ての要素が恐怖につながっており、ゲームを進めることでより怖くなっていくという点が綿密に考えられて組み立てられているからだと思います。
一方でホラーゲームというジャンルは物語で描ける領域が広いという強みがあると考えています。登場人物が急に死んでしまうという展開など、振れ幅を大きくとることができるということです。その他のジャンルであればなかなか次々と登場人物が死ぬことを良しとしたり、超常現象を許容してくれないですから。
また、ホラーゲームは特にそういった人間の生死をモチーフにすることが多いため、メッセージ性の強い物語が描け、プレイヤーに大きな感動を届けられると思っています。
── ホラーゲームもお化け屋敷も、何度もリピートして楽しんでもらうという仕組みづくりという部分は共通する課題かと感じますがいかがでしょうか。
頓花
どちらも1回目と2回目で楽しんでもらえる部分は違うかと思っています。
1回目は純粋に恐怖を楽しんでもらい、2回目はその恐怖の背景にあるものを考察しながら楽しんでもらえれば嬉しいですし、そこまで楽しんでもらえるよう、こちらとしては考えて制作しています。
細部にこだわって作り上げた、制作サイドによる執念や情熱が、一種の怨念のようになってプレイヤーを怖がらせてくれるはずです(笑)。
ゲームも1回クリアしただけで終わるのではなく、2回目以降も挑戦し、ぜひ違う体験を感じてほしいと思います。
1回目でうまくいかなかったところも2回目には余裕を持って楽しめるようになっていたりするので、寄り道を楽しんだりしてゆっくり細部を楽しんでほしいと思います。
そこまで楽しんでもらうと、ホラーはもっと楽しいと思ってもらえるはずです。
── 今後、ゲームを含め、ホラー業界全体としてどう変化していくと思われますか?
頓花
すごく面白くなってくると思っています。VRやメタバースといった、新たなテクノロジーがホラーの体験を拡げることは間違いないです。メタバースの中で感じるお化け屋敷やホラー体験、オンラインだからこそ楽しめるホラーイベントなどなど、多くの可能性を秘めています。
例えば、私自身、実際には会ったことがない人たちと、画面の中でつながっているというインターネット特有の一体感が好きでした。それはインターネット上ででしかできないことです。お互い顔も知らないけれど、他のユーザーたちと共感しあい、一体感を感じる。そういった感覚を通じたホラー体験を提供することができないかと考えています。
仲間意識を持ってホラーを楽しむという一体感、恐怖を共有しあう、そういった新しい感覚が満足度につながる。そういった、今後はテクノロジーを活用したものを想定して作っていきたいと思っています。
── 余談ですが、御社のHP(※2)を拝見しました。非常に怖かったです。あのHPへのこだわりは何かありますか? (※ 記事最下部にリンクがありますので、ぜひイヤホンで音も楽しみながらご覧ください!)
頓花
ありがとうございます。
あのHPは実際のお化け屋敷の体験時間に近い5分程度の時間で体験できるように考えて作っております。Webで体験できるお化け屋敷であり、弊社の持つ演出力や技術力をその中で感じてもらえればと思っています。
ありがたいことに株式会社闇のHPを見に行ってみた、という動画を色んな方々にアップして頂いております。
また、ライフスタイルの変化に合わせて、これまでとは違い、ホラー体験を寝る前に布団の中で体験する、昼休みにみんなで体験するといった、新たな楽しみ方が増えてきているように感じます。
── 最後に、この記事を読んでくれているバイオハザードファンの皆さんに一言お願いできますか?
頓花 今ホラーゲームを楽しんでいる皆さんはホラーというコンテンツファンとしてはもちろん、ホラー体験を作り上げるクリエーターにもなっていってほしいと思います。ご自身の周りの方たちにホラーの楽しみ方を伝播してもらいつつ、とことんホラーを楽しむことを追求していってほしいと思います!
── 本日はお時間をいただきありがとうございました。
株式会社闇さんが仕掛けるまったく新しい形のオンラインイベント、『心霊配信の夜』が予定されているそうです!
呪われたHPを巡って、配信者と参加者全員が恐怖体験に巻き込まれるという内容になっており、参加者みんなのチャット欄での質問と回答をもとに物語の真相を推理していくというイベントになっているそうです! 非常に楽しそうですので、ぜひご参加ください!
心霊配信の夜 (当企画は日本からのみの参加となっております。)
皆さん、いかがでしたか? ホラーを楽しむ方はもちろん、ホラーを作る側の方にとっても興味深い内容だったんじゃないかと思います。
私たちが「ホラー」について振り返る機会はそう多くないと思いますが、今回ご紹介した見方を踏まえて「バイオハザード」をプレイすると、また新たな発見がありそうですね。
もし面白いと感じたら、 #REBHFun で教えていただけると嬉しいです。
では、またの機会にお会いしましょう!
頓花 聖太郎
https://death.co.jp/ 株式会社 闇 1981年兵庫県生まれ。もともとはグラフィックデザイナー。大好きなホラーを仕事にすべく2015年、株式会社闇を設立。ホラー×テクノロジー=ホラテクをテーマに、ホラーイベントの企画やプロデュース、ホラー技術の提供、ホラーを使ったプロモーションなどを行い、新しい恐怖感動を作り出している。
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