傘が語る大きな雨音
スペシャル インタビュー | 狩野英孝が語るゲーム実況で再確認した『バイオハザード』への愛
YouTubeチャンネル「EIKO!GO!!」での『バイオハザード』などのゲーム実況を通じて、お笑い芸人としてだけでなく、配信者としても広く知られる存在になった狩野英孝。その狩野に、ゲーム実況と『バイオハザード』への愛を聞いた。
狩野英孝(カノ エイコウ)
お笑い芸人。
1982年2月22日生まれ、宮城県出身。
日本映画学校(現・日本映画大学)を卒業後、「ラーメン・つけ麺・僕、イケメン」などのフレーズを駆使した一人コントの芸人としてデビュー。
お笑い芸人以外にもテレビ朝日『ロンドンハーツ』にて、シンガーソングライター(50TA名義)やYouTubeでも幅広く活躍する傍ら、実家の神社で神職にも従事している。
20年1月にYouTubeチャンネル「EIKO!GO!!」を開設。同チャンネルでのゲーム実況配信が視聴者の心をつかみ、チャンネル登録者数は298万人に上る(26年8月現在)。
── ゲーム実況での配信もあって、いまや狩野さんと『バイオハザード』は切っても切れない関係になった感があります。
(狩野)
僕の本格的なゲーム実況のデビューになった作品は『バイオハザード RE:3』だっただけに、そう言っていただけるのはうれしいです。
当時はまだ“ゲーム実況”というものをよく理解していなくて、僕がゲームの配信をしても「誰が見るの?」と思っていました。
僕の中では子どもの頃に見たゲームの専門番組の印象が強くて、そういった番組ではプロゲーマーの方々の華麗なプレイや裏技紹介が中心で、それを見て驚いたり、感動したりするものを想像していたんです。
だから、僕みたいなゲームがうまくない人間が配信をしても、面白くなるとは思えなかったんです。
── そんな狩野さんが、YouTubeでゲームの実況を始めたのはなぜですか?
(狩野)
『バイオハザード』ファンの方々から強い要望があったんですよ。
それと僕自身、実は中学1年生の時にプレイステーションで初代『バイオハザード』を遊んだ経験があって、その時は怖すぎるし難しすぎるしで途中でリタイアしてるんです。
せっかく両親に買ってもらったのに「ごめん!」と本当に申し訳なかったのを覚えています。
だから大人になった今、あらためて挑戦してみようと思ったんです。
最初は生配信ではなく、テレビ番組のように遊んでいるところを事前に撮影して、編集したものを公開しようと考えていました。
すると、視聴者の方々が「それなら見ない」って言うんです。
── 狩野さんにとっては意外な反応だったんですね。
(狩野)
全く意味が分かりませんでした。
僕はテレビで育った人間なので、実際に生配信するまでは、事前に収録して見どころをギュッと凝縮して、テロップを付けて分かりやすくしたほうが面白いに決まってるという意識があったんです。
それがやってみたら、配信中に視聴者の方がアドバイスをくれたり、トラブルが起きたりして、僕自身がゲーム実況の生配信にハマっちゃって(笑)。
── ゲーム実況の本格デビューに選んだ『バイオハザード RE:3』はゲーム実況向きでしたか?
(狩野)
『バイオハザード』シリーズ自体がめちゃくちゃ相性いいですよね!
シリーズを遊んだことのある人なら分かると思うんですけど、マップを“探索”するだいご味が本当に面白くて。
プレイする人によって最初に探索する場所や、敵と戦う順番が違ってくるので、プレイヤーごとにそれぞれのドラマがあって「すごいゲームだな」って思いましたね。
僕も他の方のゲーム配信で「そんなパターンあったの!?」と知ることも多くて、深いゲームだと感じました。
ゲーム実況は真剣勝負
── 狩野さんのゲーム実況では、“リアクション”を楽しみにしている視聴者さんも多いようです。
(狩野)
ゲームの世界に入り込んでプレイするようにしているので、『バイオハザード』の時は主人公のクリスやレオンになりきって、敵と出会ったら驚くし、何かを達成した時は喜ぶようにして思いっきりプレイしています。
他の配信者の方々よりも、1.5倍くらい楽しんでいる自覚があります。
── ゲーム実況中にトラブルが起きて、それが笑いにつながるのも狩野さんだからこそでは?
(狩野)
『バイオハザード4』の時に、喜びすぎてエンディングをスキップしたことがあって(笑)。
そこまでに何度もやり直して、やり直して…やっとエンディングにたどり着いたので全身で喜んだら、押しちゃいけないボタンを押してスキップしてしまいました…。
あの瞬間に頭の中にあったのは「視聴者さん、怒ってるだろうな」ということでした。
「ずっと配信を見続けてきたのに、肝心な場面を飛ばすって何だよ」みたいな。
でも、恐る恐るチャット欄を見たら、「やったー」っていう真逆のコメントがたくさん流れていたんですよ。
本当にすごく不思議な感覚でしたし、視聴者さんはそういう失敗も含めて僕の『バイオハザード』の実況を楽しんでくれているんだと実感しましたね。
── 配信中の失敗が面白くなるのも、視聴者にとってはゲーム実況ならではの魅力です。
(狩野)
本音を言えば、僕は「ラーメン、つけ麺、僕イケメン」のネタどおり、根っからのナルシシストだからゲームに関しても「下手」とは言われたくないんです(笑)。
本当に見せたいのはヘッドショットでゾンビをバンバン倒して、ボスキャラクターの攻撃を神回避しているかっこいい姿だから、失敗が面白いと言われてもそこまで喜びを感じてはいないんですよ。
だから時々、配信中に初見クリアや神プレイが生まれるとめちゃくちゃうれしくて。でも、それを表に出すとかっこ悪いので、気取って控え目に喜ぶようにしてはいます。
── とてもうれしそうというのは、狩野さんのリアクションから伝わってきていますよ。
(狩野)
バレてますよね。
芸人1年目からリアクションをしていますから、体に染みついていて自然と出てしまいます。
きっと生配信のだいご味って、僕が喜んでいたり、悲しんでいたりする姿を視聴者の方とリアルタイムに共有できることなのかもしれませんね。
ゲーム実況を始めてからは「みんなと一緒に喜びたい」という気持ちが強くなっていて、まるでオリンピックやワールドカップを応援している時のように、みんなと喜びを分かち合いたくなるんですよ。
スポーツもゲーム実況も真剣勝負という意味では同じで、僕は配信では「絶対に失敗しないぞ」って決意を持ってプレイしていますからね。
失敗を期待している視聴者さんとの真剣勝負なんです。
“発見”の魅力を再確認
── 『バイオハザード』の実況で印象に残っている出来事は?
(狩野)
ありすぎて迷っちゃいますが、僕個人としては中学生の時にギブアップした1作目をクリアした時でしょうか。
視聴者の方々に応援してもらいながらクリアできて、自分の中の中学生の自分に向かって「クリアしたぞ、俺」と伝えることができて、本当に泣きそうになるほどうれしかったんです。
ただ、その時はクリス編でジルを助けずにクリアしていたので、たくさんの視聴者さんから総ツッコミされました(笑)。
── 25年のリアルイベント「EIKO!GO!! SPECIAL LIVE〜TENJIKU」(25年9月23日開催)のステージ上でも、『バイオハザード』をプレイしていました。
(狩野)
8000人のお客さんの前だったので、普段のゲーム実況とは違った緊張感がありましたよ。
この時はジル編で最後のボスと戦ったのですが、唯一の武器だったマグナムが弾切れになって逃げ回るしかない状況になったんですよ。
さすがに僕自身も「詰んだ」と思いながら逃げ回っていたら、時間切れ間近になって「これを使え」と上空のヘリからロケットランチャーが落ちてきたんです!
あの時は僕とお客さんが一体になって、会場が沸いたのを覚えています。「カプコンさん、そんな仕掛けがあったの!?」って。
── ステージ上で新しい発見があったんですか。
(狩野)
『バイオハザード』シリーズにはいつも新しい発見があって驚かされます。
僕は配信が終わった後はかならずチャット欄を見返すのですが、視聴者さんの中に攻略法や設定などを教えてくれる方も多いんですよ。
ゲーム中に拾った“ファイル”の情報を整理してくれる人もいて、それがきっかけでキャラクターの過去に詳しくなったこともあります。
1周しただけでは把握できない量の情報が詰まっているのは、『バイオハザード』の魅力ですよね。
── そういったコミュニケーションは、視聴者との距離が近いゲーム実況ならではでしょうか。
(狩野)
そうですね。ただ僕の場合は、いつからか「チャット欄は見ないで進めますね」と視聴者さんに伝えてから配信を始めるようになりました。
僕は「謎解きは自力で解く」をモットーにしていて、ネタバレ防止の意味でチャット欄を見ないようにしたんです。
だから『バイオハザード ヴィレッジ』に出てきたオルゴールのパズルなんて解くまでに30分以上かかっていて、あとでチャット欄を見返したら「風呂から帰ってきたけど、まだやってるのか」と言われてましたからね(笑)。
本当に苦戦した謎解きだったので、僕はあのオルゴールを勝手に“心折れゴール”と呼んでいます。
でも、謎解きは絶対に心折れずにやりますよ! じれったく感じる視聴者さんもいるでしょうけど、そんな方も僕が自力でクリアすると一緒に喜んでくれるんですよ。
“街ぶら”ロケとの共通点
── 今の狩野さんにとって、ゲーム実況とはどんな存在でしょうか。
(狩野)
YouTubeで「EIKO!GO!!」チャンネルを立ち上げた当初からたくさんの方々に見ていただいてますが、そのこと自体にはプレッシャーや緊張感は全くなくて、ゲームの楽しいところを伝える手段ですね。
「他人がゲームをしているところを見て面白いの?」と感じる方もいるでしょうし、僕もそう思っていた時期がありました。
でも考えてみたら、僕が小学生の頃は学校が終わったら友達の家に行って、友達が遊んでいるゲームをポテトチップスをつまみながら眺めて騒いでいたんですよ。
ゲーム配信はあの頃と一緒で、友達と「そこ右! 右!」と楽しく騒ぐ延長線上にあるものと思っています。
── 配信を見て、狩野さんのファンになった方もいるのでは?
(狩野)
街でロケをしていると「テレビで見ました」と言って下さる方と同じくらい、「ゲーム配信見てます」と仰ってくださる方も増えてきました。時にはそっちのほうが多い日もありますし、僕としてはそう言ってもらえるのはとてもうれしいですね。
僕の中ではテレビもゲーム実況も“芸人としての脳みそ”を使う同じカテゴリーのものなんですよ。
たとえば『バイオハザード』の実況では、僕が敵にあだ名をつけるのが恒例になっているのですが、それも回を重ねるごとに大喜利化していて芸人としての脳みそを使っています。
配信も芸人も同じ“人を笑わせる1つのエンタテインメント”なので、「テレビやゲーム実況を見ました」と言ってもらえるのは本当にうれしいです。
── ゲーム実況で、芸人としての経験が生きることは多いですか。
(狩野)
『バイオハザード』のゲーム実況って、街ぶら番組のロケに近いんですよ。
「おいしいご飯屋さんを探してるんですけど」と街の人に取材をした後は、カメラに向かって「じゃあ行ってみましょう!」となるじゃないですか。『バイオハザード』も同じで、有力な情報をゲットしたら「行ってみよう!」となり、行ってみたら鍵が必要なことが分かって「鍵はどこにあるんでしょうかね」みたいなコメントをする。
そういう流れが街ぶらロケと同じなんですよ。
しかも、僕はピン芸人だからもともと1人でロケをしていたのも生きていて、街の名物お父さんにツッコんだりしていた経験が、ゲーム実況で敵にあだ名をつけることにつながっていますよね。
若い頃から、ずっとピン芸人としてカメラさんやお客さんに向かってやってきたから、1人でやるゲーム実況も合ってたんでしょうね。
それに気づいてからは、ゲーム実況がしっくりくるようになりました。
── ゲーム実況で学んだ事柄が、お笑い芸人として生きたことは?
(狩野)
とっさに出ちゃうことはあります(笑)。
この間も『かのサンド』(フジテレビ系)で、サンドウィッチマンの伊達(みきお)さんが公園の車止めに引っかかって進めないってボケたんですよ。
それに対して「『バイオハザード』の初期みたい」ってツッコんだことはありました(26年8月2日放送回)。
どこからでも遊んでほしい
── 『バイオ』シリーズでお気に入りのヒーローはいますか。
(狩野)
すごく悩むんですよ。
ナンバリング作の主人公たちは全員好きだし、出現する敵だって好きなくらいです。
なんなら『バイオハザード』の冒頭で振り返ってこちらを見るゾンビは印象的で、一生忘れられないです。
ただ、強いて言うならイーサンでしょうか。
特殊な訓練を受けたわけでもない、普通のお父さんが頑張る姿に家族愛を感じて、最後まで素顔が見えないことが想像力を広げるきっかけにもなって、どんどん好きになっていきました。
── ゾンビなどのクリーチャーで印象に残っているのは?
(狩野)
『バイオハザード』の序盤で、窓から廊下に飛び込んでくるケルベロスですね!
あの廊下は何度も通らないといけないのに、あいつ、ずっといるんですもん!
ハンドガンを下に向けて撃ってもなかなか当たらないし、ショーケースの下にある弾薬を取ろうとしても邪魔するしで、もうずっと絡んでくる憎たらしいヤツっていうイメージが強いです。
そういえば以前、『バイオハザード』のプロデューサーさんが、主人公たちだけじゃなくてソンビのような敵や洋館のマップまで愛してもらえるように意識したと仰っていたんですよ。
それを聞いて、だからこそキャラクターや敵の存在感がこんなに強い作品になんだろうなって感じました。
── まだ遊んだことのない方に『バイオハザード』シリーズを薦めるとしたら?
(狩野)
これは僕のゲーム実況の視聴者さんにも伝えたいんですけど、『バイオハザード』はゾンビを倒すだけのシューティングゲームじゃないし、ただのホラーゲームでもないんですよ。
しっかり作り込まれたストーリーには怖さを忘れて涙したり、笑顔になったりできますし、ゲームの中で何かをやり遂げた時には他では味わえない達成感があります。ぜひ実際に遊んでみてほしいです。
『バイオハザード7 レジデント イービル』と『バイオハザード ヴィレッジ』で主人公を務めたイーサン。どこにでもいる普通の父親が、娘を助けるために戦う姿が共感を呼んだ。
どこから遊んでも感動できる
── どの作品からプレイするのが、狩野さんのお薦めでしょうか。
(狩野)
シリーズを古い順にプレイしてもいいでしょうし、新作の『レクイエム』からでも構わないと思っています。
最初の『バイオハザード』でのラジコンのような独特の操作感に「あの頃のゲーマーはこんな難しい操作でやってたんだ」という感動も味わってほしいですし。
僕自身も昭和の『インベーダー』の頃にはやったテーブル型の筐体を見ると、「このレバーと少ないボタンでクリアしていてスゲェ!」と当時のプレイヤーを尊敬することが多いんですよ。
それに過去作を順番に楽しんでいけば、『レクイエム』の物語がより深く理解できるのも、順番にプレイした時ならではですよね。
── 『レクイエム』も配信でプレイしていましたね。実際に遊ばれていかがでしたか。
(狩野)
シリーズと一緒に年を重ねてきた自分が、『レクイエム』で年を重ねたレオンと一緒にラクーンシティに戻ってこられたことに心がギュッとなりましたよ。
『RE:2』の「Welcome Leon」の飾り付けが再登場した時は、シリーズを追ってきて良かったと思いましたし、開発スタッフの方々が過去作をリスペクトしていらっしゃるのが伝わってきて感動しました。
ただ、僕は思うのですが、こういう感動が味わえるのは人生で1回だけなんです。
『レクイエム』からシリーズを逆にたどった場合は、『RE:2』を遊んだ時に「この飾り付けって『レクイエム』の?」という僕とは違うパターンの人生で1回限りの感動を味わうはずなんですよ。
だから、どこからプレイしても楽しめると思いますし、30年の歴史と深みを持つ『バイオハザード』だからこそ、どの作品を入口にしても構わないから実際にプレイしてほしいです。
── 狩野さんがシリーズの今後に期待することは?
(狩野)
たくさん残っている伏線のその後が知りたいですよね。
『レクイエム』に関して言えば、クリスやエイダはどこで何をやっていたんだろうというのがすごく興味ありますし、シリーズで言えばやっぱりイーサンの娘のローズマリーのその後が気になります。
『バイオハザード』への思い入れが強すぎて、新作をやるたびに今までの主人公たちが出てくるんじゃないかってドキドキしてるんです。
そんな僕を楽しませてくれる表現や演出を織り込んだ作品を作っていただけるとうれしいですね。
狩野さんが苦戦した『バイオハザード』のケルベロス。窓からいきなり飛び込んできて、プレイヤーに問答無用で襲いかかる。
写真/長谷川智紀
