傘が語る大きな雨音
アフリカの陽光に潜む恐怖を奏でる――『バイオハザード5』の音楽|鈴木幸太/Kota Suzuki
『バイオハザード5』は、主人公クリス・レッドフィールドがアフリカでバイオテロの脅威に立ち向かうアクションシューティングゲームです。
シェバ・アローマがパートナーとなり、シリーズで初めてオフライン・オンラインともに2人での協力プレイ(Co-op)を全面的に採用したことも大きな特徴です。
私は多くのバイオハザードシリーズの音楽制作に関わってきましたが、初めて担当したバイオハザードはこの『5』でした。
ホラーといえば、孤独なプレイヤーが暗闇の室内を探索することが定番ですが、
『5』は、アフリカの日中の野外が舞台で、しかも協力プレイ、どのようにホラーを音楽で表現するべきかを、悪戦苦闘した記憶があります。
いま思い返しても、ディレクターからのリテイクが一番多かったシリーズかもしれません(笑)
アフリカを想像させるパーカッションやボーカル、そこに前作『4』で確立されたノイズミュージックやアンビエントミュージック、さらにはシリーズで継承されている重厚なオーケストラサウンドをミックスし、『5』の音楽は構築されました。
常に意識していたことは「プレッシャーを表現する」こと。
プレイヤーを追い立て、パニックホラーを体験させることが、この作品の音楽に必要な要素でした。
パーカッションはグルーヴを生み出すのではなく、まるで恐怖を感じるプレイヤーの心音を表すように、オーケストラは壮大さだけではなく、押しつぶされそうになるような空気の重さを表現するように、構築していく必要があったのです。
そして、ハリウッドでのオーケストラレコーディングを行った楽曲については、特に強い思い入れを持つことになりました。
自分の作った曲を一流のオーケストラプレイヤーが演奏すると、こうも音の表現力が上がるのか、と、ただ感嘆し、圧倒されました。
実は、タイトル加入してまもなく作ったのが、オーケストラ楽曲群でして、
ウェスカー戦でおなじみの「Wind of Madness」や、アフリカンボーカルを起用し、書き下ろした「Pray -Theme Song-」も、そのうちの楽曲たちです。
あの時はただがむしゃらに、自分なりの解釈で作っていきましたが、
結果的に多くの方に気に入っていただけたようで何よりです。
新鮮な気持ちで作れたからこそ、あのようなアプローチに到達できたのではないだろうか、もっと開発後期に制作していたら、同じものにはならなかったかもしれない、と思ったりします。
私がバイオハザードシリーズ音楽の魅力だと思っているのは、
恐怖に徹している曲と、かっこいい曲とが、うまく共存し、演出にメリハリを与えている点です。
この点は、『5』はもちろん、バイオハザードの他シリーズを担当する際にも、常に意識しています。
バイオ30周年記念コンサート、特別な編成、アレンジで演奏される楽曲群を、
ぜひ、当時の思い出とともに、お楽しみいただけるかと思っております。
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